コード進行講座・応用編
基本の6コード(I〜vi)に、ちょっとだけ音を足すと、コード進行はぐっと表情豊かになります。
今回は拡張音「7th」の仕組みと、それを利用した「セカンダリードミナント」を見ていきます。
同じV→Iでも、7thをひとつ足すだけで「帰りたい気持ち」が倍増します。
ドミソなど、調の中で音を1個飛ばしで3つ重ねた音がコードの基本の形でした。
この上にもう1音重ねたものが拡張版のコードで、この追加の音を「テンション」と呼びます。
もっとも代表的なテンションが今回紹介する7th(セブンス)です。
数え方は2段階に分かれます。
① 度数で数える(音階の何番目か)
ドを1番目として、ドレミファソラシド…と数えていくと、シは7番目。
だから「セブンス(7th)」と呼びます。
② 半音で数える(実際の距離)
ですが黒鍵まで含めた実際の距離(半音数)によって、性格が違う2種類の7thに分かれます。
ドから黒鍵も含めて数えて、
11半音ならメジャー7th(シ)、
10半音ならマイナー7th/b7(シ♭)。
半音1つの違いで、コードの性格がだいぶ変わります。
※7thのさらに上にも9th、11th、13th…とテンションを重ねていけますが、今回は7thだけ紹介します。
7thには「メジャー7th」「マイナー7th(b7)」の2種類があると説明しましたが、
実際に鳴らすコードとしては4つの名前に分かれます。理由は、7thの種類だけでなく、
土台になっている3和音がメジャーかマイナーかも組み合わさるからです。
これをI〜viの6つに当てはめると、こうなります。
| タイプ | 該当するコード |
|---|---|
| メジャーセブン (M7) | IM7 IVM7 |
| マイナーセブン (m7) | iim7 iiim7 vim7 |
| ドミナントセブン (7) | V7 |
大文字(メジャー)のI・IVには素直にメジャー7thが付き、
小文字(マイナー)のii・iii・viには素直にマイナー7thが付きます。
Vだけ「メジャーコードなのにマイナー7th(b7)が付く」例外パターンで、これが次の章の主役になります。
3種類の7thは、それぞれ違う感情のニュアンスを持っています。
ドミソは安定した響きです。
ドレミファソラシドの中で、シはドのすぐ隣の音です。
すぐ隣だからこそ「安定しているドに向かいたい」と
少しの緊張感が生まれます。これがトニック本来の
安定感にふわっとした
儚さを加えます。ニコニコ
笑顔のメジャーコードが、
少し儚げな微笑みに変わるイメージです。
マイナー7thはマイナー(暗い)の響きを、少しやわらかく、まろやかにするイメージです。
V7だけの特別な組み合わせ。強烈な緊張感を生み、トニックへ帰りたい気持ちを一気に高めます。仕組みは次の章で。
7thから更に9th、11th、13thと積み重ねていくほど、
メジャー/マイナーという「明るい・暗い」の単純な表現から、ふわふわした
浮遊感のある響きに変わっていきます。とりあえず7thを足せばお洒落、
というのは間違いではありませんが、意味も分からずなんとなく乗せるのはもったいないです。
7thだけ見るとm7と同じ「b7」のV7が、なぜここまで特別扱いされるのか。それは、
V7(ソシレファ)の中にだけ「シとファ」という組み合わせが登場するからです。
この組み合わせは6半音離れていて、特に不協和な距離感(トライトーンという名前がついています)
なので、それぞれ次のように「移動して落ち着きたい」気持ちを秘めています。
半音上がって落ち着きたい
半音下がって落ち着きたい
この2つの「解決したい」気持ちが同時に働くことで、V7→Iはコード進行の中でも屈指の強力な帰巣本能を生みます。この動きを「ドミナントモーション」と呼びます。V7が鳴った瞬間、
次にIが来ることを予測できてしまうくらい鉄板の組み合わせです。
このドミナントモーションの強さを利用すると、本来のトニック(I、vi)以外の場所にも、一時的に「帰りたくなる力」を作り出すことができます。これが次に紹介する「セカンダリードミナント」です。
通常、コード進行はひとつの調(Key)の中で完結させるのがシンプルですが、このテクニックを使うと、一時的に「よその調」の音を混ぜて、よりドラマチックな展開を作れます。拡張パックです。
考え方はシンプルです。I〜viのどれかを一瞬だけ「仮のトニック」に見立てて、その仮トニックに
向かうための専用ドミナントセブン(V7)を、よその調から借りてくる。それだけです。
仮のトニックから右に5つ数えた先のコードが専用ドミナントなので、簡単に見つけられますね。
Key=Cで実際に並べてみると、こうなります。
| 仮トニック | I | ii | iii | IV | V | vi | vii |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 借りてくるV7 (仮トニックの5つ先) |
V7 | VI7 | VII7 | I7 | II7 | III7 | #IV7 |
| 使用頻度 | ◎ | ◎ | × | ◎ | ◎ | ◎ | × |
色はドミナントと同じコーラル系にしています。セカンダリードミナントも、正体は「V7」であることに変わりはないからです(点線の枠は「よそから借りてきた」印)。
Iの列のV7は、本来のV7なので新しく覚える必要はありませんね。
実質、新顔はVI7・III7・II7・I7の4つです。VII7と#IV7は使用感がかなり特殊で難易度も高いので、
今回は割愛します
実際の曲でどんな風に使われているか、代表的な型を4つ紹介します。
元々I→IVは、トニックからサブドミナントへの軽い外出感を持つ動きでした。IをI7に変えることで「IVに向かわなきゃ」という必然性が生まれ、より強くドラマチックな動きになります。
「丸の内サディスティック」のコード進行として有名な型(通称・丸サ進行)。本来IV→V→vi→Iと進めるところを、Vの代わりにIII7を使うことで独特のオシャレさが出ます。最後のI7もセカンダリードミナントで、次のIVへ自然につながる仕掛けです。
ジャズの定番進行 ii→V→I(ツーファイブワン)の、iiをセカンダリードミナントのII7に置き換えた形。地味な部分ですが、vi→II7の動きもドミナントモーションではないものの、同じ「5度下がる」性質の動きになっています。
今までV7の代わりにIII7を使う...など代入することが多かったですが、今回はviがそのままVIに変化しています。IやviのトニックからVI7へ、そこからiiへ行く動きはよく見かけますね。
iii→VI7、VI7→ii、V7→Iは、すべて根音が5度下がる同じ性質の動き。ドミナントモーションが連続する「5度の大コンボ」が完成します(原曲ではii→III7→Iという少し違う形で登場しますが、III7をV7に置き換えると、この連鎖がきれいに揃います)。